フランスの個人発明家が日本で紛争に巻き込まれた事案

本事件は、今から20年ほど前の事件で、私が海外業務を始めた頃のことです。
本件も他の代理人が対応できない、ということで当方が受任したものでありましたが、依頼人はフランスの個人発明家であり、フランスの有名な舞台建築家でした。
舞台建築というのはオペラ座等の建築を専門とする建築家のとで、フランス及び海外でユニークな建築技術に関する特許発明を保有し、日本でも出願を行って日本で特許に基づくビジネスを行い始めた頃でした。

本事件では、日本のゼネコン及び建築機械メーカーの、フランス人に対する契約違反の問題と、建築機械メーカーの「改良技術」という名目での発明のコンセプトの「無断使用」であると主張する「特許権侵害」問題の双方が論点となりました。

本事案では、契約違反事件では、東京高裁での和解により1億円近くの損害賠償を勝ち取ることができ実質的な勝訴でしたが、特許権侵害事件の方は、基本発明のコンセプトを使ってはいましたが、残念ながら、均等論を使用しても 特許権侵害として訴追できる範囲にはありませんでした。

このフランス人発明家は、当初、非常に日本人不信に陥っており、大変にラフな対応をされた経緯があります。

例えば、当方が日本出願に関し、「拒絶理由通知が発せられた」旨のレターをFaxすると、翌日の夕方にフランスから国際電話が入り、「なぜ、オレの出願が拒絶になるのか。」といったケンカ腰の話が始まりました。
当方も、極めて下手な英語で「あなたの出願が最終的に拒絶されたわけではない。審査では最低一度はこのような通知が出る。」等の話を行った場合であっても、全く聞く耳を持たず、フランス語なまりの聞き取りにくい英語で「日本人は皆嘘つきだ、オレは日本で大変な目に逢っている。」という話が始まります。
当方もそれほど人生修行ができていないせいもあり、ガチャンと電話を切ると、5分後に「さっきはごめん」というようなFaxが入る、といった非常に面白い展開がありました。

この発明者は、ソルボンヌ大学の建築学部を卒業した非常に優秀な方で、ミラノのスカラ座も自分が改装した、という、フランスでは知る人ぞ知る著名人でした。
このような優秀な発明者を日本人不信にしてしまった日本人及び日本の大会社の対応のまずさ、国際感覚のなさを切実に感じた事件でした。

このフランス人発明者とはその後長く付き合うこととなり、年齢ははるかに相手の方が上ですが互いに「親友」という感覚になりました。

本事案で学んだことは、日本企業の倫理感覚です。
「改良」という名目で当該発明家に何の承諾もなく個人発明家の発明の基本コンセプトを借用すること、及びこの借用により発明家はプライドを大きく傷つけられていること、そのものが非常に考えさせられました。
また、はるか東洋の知らない国で一人でがんばっている外国人を助けることの難しさ、大事さを痛感した事件でした。

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