中小零細企業と特許(知財)について

1.日本の産業構造と特許と出願の出願人とのギャップ

日本の産業構造は、全企業の99.7%の中小企業と残りの大企業とによりできております。
このようなピラミッド型の産業構造は日本の特徴といわれており、隣国の韓国や、燐隣国の中国とは全く異なる形態です。ドイツが同様の産業構造といわれております。

一方、全特許出願の90%以上は大企業であり、中小企業に関しては実用新案を含めてもなお非常に少ない出願件数です。
従って、特許庁の側から見れば、昔から、特許制度のユーザーといえば大企業を意味しており、法制度改正を行う場合やパブコメを募る場合にも、大企業により構成された知的財産協会の意見を聞く、という場合がほとんどです。従って、従来より官民共に「特許制度の主役は大企業」という認識で来ております。

しかしながら、日本を支える中小企業の知財が十分に保護されているとはいえない現状があり、国家政策的に見ても日本の産業競争力の低下が懸念されます。
また、アジア諸国における模倣の現実は日本の中小企業にとり大きな脅威であります。日本の中小企業の利益が守られないということは、日本の産業そのものの危機を招くことになり、結果的に日本の国際競争力をさらに低下させることになります。

このところ、シャープ、東芝、タカタ等の日本の優良企業の没落を目にしますが、いずれもサラリーマン経営者又は創業一族の怠慢と言わざるを得ない現状があります。やはり、日本の大企業経営者の質的低下が起きているといっても過言ではないと思います。

これに比して、中小零細企業においてはどうかといえば、私がこの10数年間にお付き合いさせていただいた、中小零細企業経営者は皆、一本筋の通った方が多く、その熱い念いに感動し触発されながら、中小企業支援の念いを強くしたものでした。

そこで、至誠国際特許事務所はこのような現状に鑑み、「中小零細企業・個人」の顧客様の知的財産による保護を通じて日本経済の発展に寄与すべく、「中小企業支援」を事務所の経営方針とし、この経営方針に照準を合わせて事業を展開してきております。

2;中小零細企業支援の実際

事務所の歴史は未だ15年程度ですが、私はそれまでは大企業を顧客とする特許事務所に勤務していたため、中小企業、特に、零細企業の方々との本格的なお付き合いは初めてであり、非常に勉強になりました。

私は、大企業をお客様とする場合と、中小零細企業を即ち客様とでは、全く事務所の業態が異なると思います。大企業顧客相手の感覚では本当に中小企業に向き合うことは不可能です。
即ち、大企業には知財部があり、知財部で、ある程度、案件に関する整理を行い、発明提案書の形で提供してもらえまずが、当然のことながら中小零細企業には知財部等はなく、生のままのアイデアが提案されてきます。これを事務所側で最適な保護形態となるように様々なアレンジを行い、最適な保護形態を助言、指導させていただくことから始まります。

この場合、多くのお客様は「このようなアイデアがあるので製品化して販売したいのだが」という形でのご依頼になります。この場合、まず、当該アイデアを技術的アイデアであるか、デザインに関するアイデアであるかに分けて分類します。
また、すでに実施されており、救済できない状態のアイデアの場合には、不正競争防止法での保護の可能性を考えます。商標う買うの場合には、ほとんどご了解のお客様ばかりなので問題はありません。

当所の場合、権利化をご希望される場合でも、必ず、出願前調査をお勧めします。
その理由は、多くのお客様は製造、販売を前提とされていることから、先ずは、他人の権利を侵害する可能性がないか否か、を確認することが非常に重要です。一度、他人の権利を侵害するとして警告を受けた場合には、多くの時間と費用を負担することとなるからです。その負担に比して、非常の少額で調査を行うことが可能です。

侵害の可能性がないことが判明した場合には、次に、特許出願又は実用新案出願を行った場合の特許又は登録の可能性に関する調査を行います。出願から特許までの費用はほぼ60万円から、場合によっては100万円近くになる可能性もあることから、無駄な費用を節減するためにも、事前の登録可能性を探る調査が有用です。

技術的アイデアに関する保護を考える場合の当所の特徴としては、実用新案制度を徹底的に使う点にあります。通常、技術的アイデアというと「特許」となるのですが、その弟というべき制度に「実用新案」があります。

実用新案登録は、特許の場合、登録になるまで長時間(2年程度)かかりますが、実用新案の場合には2か月弱で登録になります。これは特許の場合には登録前に厳格な審査を行いますが、実用新案は無審査で登録するからです。
それでは、無審査で登録された権利は使い物になるのか、という疑問が生じますが、これにはコツがあり、ちゃんと実用新案でもビジネスを保護することができます。

このようにして、当所の場合には、お客様に対する非常に密着したアドバイスをさせていただきながら業務を進めていきます。

3.コアコンピタンス経営

「コアコンピタンス」とは、一言でいうと「その企業の中核となる強み」であり「顧客に対して他社には真似できない自社ならではの価値を提供する中核的な力」であり、ゲイリーハメル教授がハーバードビジネススクールで提言したものであります。中小企業が生き残るためには、まさに「コアコンピタンス経営」をしていき、オンリーワンの地位を得ることが必要であろう、と思われます。例えば、ホンダ自動車のエンジン技術がこれに該当します。

このコアコンピタンスのさらにコアとなるものが知財であります。特許、実用新案、商標、意匠すべてが企業の「オンリーワン」を支える核となりえます。知財は単独で価値があるものではなく、あくまでもビジネスとの関係でビジネスを保護するために存在しているものであります。従って、当然のことながらビジネスの視点を欠いた知財権の取得、知財保護はありえません。

中小零細企業も、もしくは中小零細企業こそは、コアコンピタンス経営を行い、大企業の下請けの立場や、他企業のフォロアーとなるのではなく、技術、市場、顧客の隙間をついて独自のマーケットを確立し、ニッチャーとしての存在になるべきで、その際には、知財は非常に有効なツールとなります。

4.模倣・紛争と知財

中小企業にとって模倣防止、紛争回避は非常に大きな問題であります。一度、侵害者として紛争事件に巻きこまれると、権利者側から警告書がおくられてくることとなり、非常に煩雑であると共に。解決には時間と費用を要します。従って、無用な紛争に巻き込まれないように製造、販売開始当初から十分に気を付けることが必要です。

また、権利者側の場合には、マーケットをしっかりと保持するためにも、模倣品、侵害品の発見に努めることが大事です。多くの場合、営業担当者からの報告により模倣品、侵害品を発見することとなりますが、いかに効果的に模倣品、侵害品をマーケットから排除するか、が課題となります。

中小零細企業の場合には、ある意味、企業の存続をかけて特許等の登録をするものであり、特許等の企業における価値は、大企業の場合とは比較にならない程、大きなものです。従って、「保有する権利は効果的に最大限使おう」という観点から、一般に、権利行使には非常に積極的です。従って、警告書の発送、警告書への応答、交渉、場合によっては訴訟という事態も多々あります。

この点は、大企業同士であまり警告書のやり取りは行われず、水面下でのクロスライセンス交渉で権利侵害の事態が処理されていることとは全く事情を異にします。大企業同士で訴訟を行うことはめったにありません。この点で、日本の侵害訴訟の多くは中小企業により行われていると言っても過言ではありません。

当所も数多くの紛争事件を扱ってきており、警告書の発送、回答書の発送、交渉、訴訟も数多く手がけてきております。

5.権利創設業務と紛争事件業務

従って、当所の業務は、大きく分けて「権利(特許)創設業務」と「紛争事件業務」に分けられます。その割合は圧倒的に権利(特許)創設業務の方が大きいのですが、紛争事件を扱うことの意義は非常に大きなものがあります。

その最も大きな理由は、紛争事件において創設した権利は初めて実際に有効に使えるか否か、が判明するからです。権利を創設する理由はあくまでもマーケットで自社の商品を守り、模倣品、侵害品を排除するためですから、実際に使える権利を創設する必要があります。

即ち、有効に他人の模倣品を排除できるように権利を創設すべきであるわけです。この点、将来の侵害を予想、想定しながら権利の創設作業を行うことは非常に難しいのですが、ここをいかに頑張れるか、が勝負となります。その意味で紛争事件での全ての経験を権利創設業務に有効にフィードバックすることができます。ここに実務家として、事務所として負担の大きい紛争事件業務を取り扱う意義があります。

6.知財保護制度・特許制度は誰のためのものか

上記のように特許のほとんどは大企業のものです。しかしながら、大企業はその特許、知財を有効活用しているかといえば、決してそうばかりではないと思われます。

一般的に言って、大企業の場合、特許出願に関し審査請求を行い権利化を目指す案件は、おおむね全体の1/2~1/3程度ではないかと思われます。この傾向は、出願件数が多くなればより顕著でしょうし、近年、コスト削減の観点から、重要な海外案件は権利化し、国内案件を減らす傾向にあり、その結果、国内特許出願件数の減少につながっているものと思われます。

一方、中小企業の場合、一件一件が非常に重要で、いずれもがその企業が全力で権利化に向けて頑張る、という「命がけ」の案件が基本です。この傾向は、企業規模が小さくなればなるほど強まります。従って、このような中小企業の「なんとしても権利化し、自社の技術を守りたい」という強い想いがあってこそ、拒絶査定にめげることなく、審判を行い、発明者による面談を行い権利化へ持ち込む、という、全ての技を出し切るようにして権利を取ることになります。

また、権利化後は、せっかく取得した権利を有効に活用するために、権利侵害、模倣が発生した場合には侵害者には厳しく対応し、場合によっては訴訟を行い自社のマーケットを守る、という事態もあります。

このように考えれば、知財制度全体から見た場合、大企業の知財活動は極めて限定的なものであり、特許法の204条の条文の内、使う条文は非常に限られており、ほんの数条のみの可能性があります。一方、中小企業の場合には、多くの条文を駆使してやっと自社の事業が守られる、という事態が非常に多いものであります。

そうであるとすると、法律が本来想定するユーザーこそが中小企業である、ということになります。即ち、知財行政の主役は、本来、中小企業なのです。

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