こんな発明でも特許になる!
こんな簡単な発明でも特許になるんです!
当事務所では、中小企業のお客様から様々なアイデアについて日々ご相談頂いており、中小企業様の特許出願のお手伝いをさせて頂いております。
ご相談頂くアイデアの中には、「こんな発明で特許がとれるのだろうか」と思われるものもしばしば存在します。
しかし、以下においてご紹介させて頂く事例は、「まさかこんな発明が特許をとれるなんて・・・」と思われるようなものが実際に特許を取得し、大成功を収めたものばかりです。
「こんな発明では特許なんて無理だろう」とお考えの方も、是非一度当事務所にご相談下さい。
あなたの発明が、世界に認められる日が来るかもしれません。
成功事例一覧
1.「起き上がり杖」
2.「これが中小企業の発明だ。―プレス加工でできたナットー」
3.「これが中小企業の発明だ。―ポリカーボネート製のバッグー」
1.「起き上がり杖」
今から約15年ほどになるが、あるお客様から特許を取ってほしいとの依頼がありました。
案件は「杖」です。一見、普通の杖でありましたが、よく見ると、J字状の柄の部分が、先端部が軸方向とは別の方向に捩じれています。お客様に説明を聞くと、「母親が老齢で腰が悪く歩行に杖を使うが、手の握力も弱ってきているので杖をよく落とす。その時に、地面に落ちた杖を拾わねばならないが、腰も弱ってきているので拾うのに苦労をしている。これを見て何とかならないかと考えた」「いろいろと工夫して杖を自分で作っているうちに、偶然に柄の部分のみがねじ曲がった杖ができあがり、使ってみると非常に老人には使いやすい」とのことでありました。
どのように使いやすいかといえば、柄の部分が軸方向に対して所定角度にねじれていることから、杖を地面に落とした際に柄と地面との間に空間ができるため、柄を足で踏むとテコの原理で杖の他端部が起き上がってくる、という作用が得られます。発明はこれだけですが十分に大きな効果があります。
しかしながら、あまりにも構成、形態が単純であったことから、自分自身でも「果たしてこれで特許になるのか」という疑念は拭えず、参考として傘の柄で何か関連のあるものがないかと思い、ある傘屋さんに行き尋ねましたが、「こんな形状の柄は傘には沢山ある」と半ば相手にされなかったことから「よし。それならば私が発明者を守ってあげよう」という気持ちになり気合が入り、特許出願の書類を作成し特許庁への出願を行いました。
また、依頼人からの希望で、米国、欧州、韓国へも出願しました。その結果、日本を含め、いずれの国でも特許が成立しました。
米国でこの出願を依頼した特許弁護士に拒絶理由通知への対応で会いに行った際に、柄の部分のみを持参して見せたところ「シンプルで美しくこれこそが発明だ」といっておりました。
この杖は発明者によって多数生産され、また、グッドデザイン賞も取り、一時は、日本橋の有名デパートで1万円以上の値段で販売されておりました。全く素人の方の発明が起業化に成功した代表例といえます。
2.「これが中小企業の発明だ。―プレス加工でできたナットー」
この案件は、7年ほど前にご依頼のあった案件で、ご依頼人の方はプレス加工製造業で、プレス加工の名人でありました。
ご依頼案件は「プレス加工により製作したスペーサーナット」です。スペーサーナットとは、例えば、パソコン、ビデオ機器の筐体内部において、様々な部品を筐体内部において固定するために使用されるナットです。このスペーサーナットは、従来はNC旋盤による削り出しで作製されておりましたが、切削加工ではコストが高いことから、ご依頼人の方はプレス加工で作ってみたら、とりあえず出来た、ということでした。プレス加工によるメリットは、切削加工よりも製作コストが安い、ということでありました。
この案件を受任した時に、果たして特許になるかどうか、私自身明確な答えを出せませんでした。
当時、いまよりも実力がなかったせいもありますが、形状は全く従来のスペーサーナットと同様で、メリットは製作コストを低減できる、という点のみであります。依頼人の方としては、これが特許になったら韓国の大手メーカーへ売り込みに行きたい、という意気込みをお話されておりました。
「そういうことであれば、ともかくベストを尽くそう」という想いで、出願書類を作成して出願し、同時に韓国出願も行いました。
当然のことながら拒絶理由通知が届き反論をする、ということを3回繰り返しましたが、結局、最終的に拒絶査定が庁から出てしまいました。
この時、依頼人本人を含め会社の3人の方がご訪問され、「なぜ特許にならないのか」と強く聞いてこられました。この時点では、未だ実力不足で、このような「従来のものとは構成、形態は同一であり、相違点は製作方法がプレス加工のみである」という案件をどのように特許庁に対してその有効性を主張すればよいのか、明確な指針を得ていなかったものであります。
最終的に拒絶査定となったわけですが、依頼人の方の「ぜひ特許にしてほしい」という強い思いを受け、「よし、なんとせねば」という気持ちになり、本当の意味で腹が据わりました。
そして、作戦を立て、まず、審査官と面談をすることを計画しました。この時点で面談がこのような案件にどの程度有効なのかも正直なところ不明でしたが、その可能性に関しては確信しておりました。また、何とか進歩性の根拠を出したいと思い、従来の切削加工のナットと比較しての強度試験の実験データを採ってほしい、旨依頼人に依頼しました。
審判請求を行い、特許庁では、審査から審判へフェーズは上がり面談を申請し承認され、面談日が決まりました。予め、依頼人の方の会社へ出向き、①発明品に係る製品を多数持参すること②できるかぎり「従来のものからこのように改善し、このようなメリットが得られた」ことを発明者自身の口から熱く語って欲しい、旨、依頼しておきました。
当日、特許庁の指定された面談室で、依頼者は机におききれない程の製品を面談室に持ち込み、与えられた1時間の面談時間のほぼ9割の時間を、発明品のすばらしさについて大変に熱く審判官に語りかけました。
その時に、依頼人と審判官3名との間のやり取りの中で、審判官の一人がふと、「僕はこの件は中小企業の発明なんだから特許を認めてもよいと思う」とつぶやきました。その一言を聞いた時に、世界が開けました。即ち、第一に、「本件は特許の可能性がある」こと、第二に「大企業の特許のハードルと中小企業の特許のハードルは違う」ということです。
この時に、私の中で、大きく世界が見えてきました。「なるほど、そういうことなのか」という大きな気づきを得た瞬間でありました。ここで得た気づき、知見がその後、現在に至るまでの私自身の「中小企業支援の知財実務」における指針となっております。そして、予想通り、その案件は特許になりました。
その後、全く同じ理由で韓国でも拒絶査定になり、同様に韓国特許庁まで依頼人の方と面談に行って特許になりました。この段階にも沢山のドラマがあります。
このような経過で得られた様々なノウハウが現在の私、及び特許事務所の実務を支えております。ここに謹んで、本件依頼人の方に御礼を申し上げる次を第です。
3.「これが中小企業の発明だ。―ポリカーボネート製のバッグー」
この案件の依頼人は、当所の創立当時からのお客様の案件でした。そのお客様は合皮製のバッグを製造、販売されており、中高年の女性に特に人気のあるブランドでした。
この経営者の方は非常に知財意識が高く、その会社のバッグは多くの特許権、実用新案権、意匠権、商標権により守られており、「うちのバッグは知財の塊」が口癖でした。
当然のことながら、合皮製バッグの競合会社は非常に多く、他社バッグへの差別化を常に意識される必要がありました。この観点から、経営者の方は堅牢ではあるが剛性が大きすぎバッグの素材には向かないと言われていたポリカーボネートを表皮材とするバッグを考案されました。
もちろん、表皮材としてのポリカの剛性を確保したまま、女性が手にとっても違和感のないレベルに表皮材としていかになじませるか、が課題となります。従って、他の柔らかな素材と抱き合わせにした表皮構造が発明の内容というになりました。
この案件に関しても、審査では拒絶理由通知が3度出され、審査官との面談を行い、発明の趣旨を説明しましたが、分かってもらえず残念ながら拒絶査定に至りました。本件を受任した時点では、中小企業にとっては審判で争うことが有効であることは知識として分かっておりましたので、経営者の方の承諾を得て審判を請求し、再度面談を要請しました。
この面談においては、私の要請に基づき、当時の専務(現在の社長)が、多数の自社製品を面談室に持ち込み、ほとんどワンマンショウという雰囲気で、3人の審判官に、熱く自社のポリカ製バッグの優位性について語り、その結果、この案件も見事に特許になりました。審判の有効性について再認識した案件でした。
尚、中小企業独自の目線から生み出された僅かな改良発明等について、特許権を取得できることも多いですので、ぜひ一度ご相談下さい。
又、現在、中小企業に対しては様々な支援制度があり、これらの支援制度を有効に利用すれば、特許権を取得する費用や時間を抑えることができます。
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著者
所長弁理士 木村高明
所長弁理士
専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。
製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。