紛争事件「豚の生皮事件」 | 特許申請・出願の無料相談|至誠(しせい)国際特許事務所

紛争事件「豚の生皮事件」

背景

過去、動物の皮を染色する方法に関して特許があり、特許権侵害されたことから警告書を出し、相手方は誠実な対応をしてこなかったことから、訴訟に発展した例があります。この訴訟も様々な示唆を含んでおりました。

状況

侵害者側の製品が実際に特許を侵害しているか否か、は、販売されている革製品から成分を分析し、かなりの確度で「本件製品は特許製法により作製されている」という立証を証拠を以て行う必要があります。そのために侵害製品を入手し、分析機関に送り、様々な手法により分析を行いました。しかしながら、十分な結果が得られませんでした。

そこで、特許法104条の「製造方法の推定」という規定を利用して、「製法特許が侵害され、結果部が同一の場合には同一製法により製造されたものとみなす」という規定があることから、この規定を利用して、東京地裁に訴訟を立ち上げました。
裁判官は被告側の「創造方法の推定」を打ち破れる反証を求めておりましたが、被告側は企業秘密を理由に、なかなか明確は反論をしてきませんでした。従って、訴訟開始後半年は、訴訟は当方原告側に有利に展開しており、裁判官は被告側に「原告側は最低限の立証をおここなっているが、被告側の立証がされていない」と被告側に着美しい判断を行っており、原告側有利の情勢でした。

結果

ところが、4月の人事異動で裁判官が交代したところから流れが変わり、一転して原告側に厳しい判断をしてきました。「原告側は、製造方法の推定規定に依存して訴訟を立ち上げている。原告側でもっとしっかりとした立証をしてから訴訟を立ち上げるべきである。」という非常に厳しい観方に変わり、結局、この流れを覆せないまま、原告、被告痛み分けの和解を行い、訴訟終結となりました。
この事件は今から10年以上前の事件で、私が、未だ紛争事件の経験が少ないころのものですが、結果は不本意ではありましたが、以下の点で非常に勉強になる事件でありました。

ポイント

(1)全て人間が行うことであり、裁判官によって結果は異なってくる。

裁判官の、物の観方、思想、考え方によりある事実の捉え方は180度変わる可能性がある。本件の原告の立場に対する観方も180度変わりました。人事異動による裁判官交代が事件に及ぼす影響は非常に大きいことを認識しました。

(2)製造方法特許の権利主張の難しさ

製法に関する発明は製法特許として権利取得を行う必要がありますが、民訴法の原則からいえば、原告側で「被告は特許権を侵害している」ことを立証する必要があります。
製法特許の場合、この立証は非常に困難であり、原告が被告の工場に立ち入り、実際に工程を確認する必要がありますが、当然のことながらそのような行為はほとんど不可能です。
そのために、特許法には「製造方法の推定」という規定(104条)があり、この事件でも原告が被告の工場に立ち入って製造工程を確認することは不可能であってため、104条を根拠に訴訟を立ち上げたものでありますが、結果的に、この点が訴訟の弱みとなってしまいました。

その後、法改正があり、104条の3という規定が成立し、さらに原告側の負担は軽減されておりますが、実際に裁判例でのこの規定の射程は不明であり、なお原告側は不安を抱えている状態です。

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