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ECサイトへの出品禁止解除措置

ECサイトへの出品禁止解除措置ー意匠権侵害の可能性とECサイトー

意匠権侵害の可能性とECサイト

ある新規の顧客から、「有名ECサイトへ出品していたが、『意匠権侵害の可能性があるので出品停止する』という通知を受けた。私は侵害していないと思う。なんとかならないか」という相談を受けた。

商品は「ストレッチ効果まくらで、寝ている間に首のストレッチ効果があるという商品であり、意匠権者がそのECサイトに対して「意匠権侵害品である」旨のクレームを行ったものである。

すぐに、意匠権者が侵害を主張している意匠登録番号情報と、問題となっている商品を送付してもらうと共に、ECサイトの規約を参考にしつつ、本当に意匠権侵害が成立するか否か、を判断を行った。

一一般的に、ECサイトは「コンプライアンス」の観点から、特に知財権侵害の商品に関しては神経質になっており、「侵害している」旨のクレームがあった場合には、実際に侵害しているか否か、の検証を行わずに、商品の出品停止処分を行っている。

意匠権は、登録意匠のみならず類似する意匠にも権利が及ぶ(意匠法第23条)。但し、特許、実用新案等の「技術に関するアイデア」は、技術的アイデアを言語により表現することから、抽象的な概念に対して権利が付与されるのに対して、意匠は「物品の外観に関するアイデア」であり、図面に記載された物品のデザインそのものに対して権利が付与されることから、「類似範囲まで権利が及ぶ」としても、特許、実用新案に比して、権利範囲は狭い。

 また、意匠とは「物品の形状、模様、色彩」という要素により把握され、本件商品に関しては侵害判断においえては「形状」の占める要素が大きい。

 この前提に基づき、実際に、意匠登録公報に表示された登録意匠と、本件の「ストレッチ効果まくら」の対比を行い侵害の有無の判断を行った。意匠登録は、本件商品と同様に「ストレッチ効果のある枕」に関する登録であり、添付図面を参照した場合、確かに全体の形状も似ていた。

しかしながら、本件商品は背面形状が意匠登録に係る意匠の背面図とは形状が異なる特徴的な要素(大きな穴部)が、非常に目につきやすい状態で表れることから、特徴的な構成が異なり、需要者は全体として異なった美観を感ずることになることは明らかであった。

従って、この点を根拠に本件商品は登録意匠とは非類似であり、意匠権侵害ではない、と判断した。

 その旨を、依頼人に連絡し、対応を検討したが、「意匠権侵害ではない」旨の見解書を作成し、その見解書をECサイトの主催会社に送付し、「相手方の主張には根拠はない」旨の反論を行ってみることで合意した。このような対応を行ったところ、ECサイト側の判断により、出品停止は撤回され、当該商品はそのECサイトに復帰することができた。

著者

所長弁理士 木村高明

所長弁理士 木村高明

所長弁理士

専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。

製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。

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