最新の特許法改正による影響は?
発明をしたら権利を守る為に特許を出す事
発明をしたら特許を取るという事は、多くの方に認識されている事でしょう。なぜ特許を取る必要があるのかについてですが、これは自身の権利を守る為に他なりません。まず、よく特許をとれば一攫千金と思う方もいますが、そうではありません。その特許を取った発明を販売するなどして商売をしたり、またそれを他の企業に売り込んで使用料を貰う事でお金を稼ぐのです。
それなら特許などなくても良いのではと思われるかもしれませんが、特許が認められた事による信頼性は宣伝として重要です。また重要な事として、他の人がその特許を取らないようにする目的もあるのです。もし、せっかく役立つ発明をしたのに、それを特許を取らずにいたまま放置してしまい、別な人物が同じ発明をしてそれが特許として認められば、自身も勝手にそれを使用出来なくなります。もし盗作されたとしても、先に特許を取っていなければこういう事態も起こり得るのです。したがって、発明をしたらすぐに特許を取る事が、自身の正当な権利を守る手段となるでしょう。
特許とそれに類似する産業財産権
特許は特許庁に出願して認められることで取得する事が出来ます。この特許庁では特許権の他に実用新案権、意匠権、商標権の出願を受け付け管理しています。これらの四つの権利は産業財産権と呼ばれており、我々が考える特許の中に含まれると考えても良いでしょう。
まず発明に関しては特許権と思う方もいるでしょうが、これは比較的大規模な発明であったり研究が対象となります。比較的小規模だったり、生活に近いレベルの発明に関しては、実用新案権が該当します。特許権と比べて軽んじられそうですが、もちろんこれも重要な権利です。そして意匠権とはデザインに関わる権利です。開発した商品の形状が該当しており工業的に利用できる事が条件です。そして商標権とはマークやネーミングの権利であり、元々、商品名なども含まれます。いくら先に考えようが、実際に使っていようが先に商標権を得た方が権利を得るので、やはり早めに出願しておくべきでしょう。
ちなみにこれらの産業財産権以外にも、文化の発展をはかる事を目的とした著作権や著作隣接権など様々ながあり、これは特許庁で管理しません。そしてこれら全ての形を持たない権利を、知的財産権と言うのです。
発明が会社の権利となる特許法改正
法律は毎年新しいものが生まれたり、また法改正されています。それはこの特許権においても同様であり、平成26年度にも特許法改正がおこなわれました。これによって様々な影響が及ぼされましたが、大きな影響として企業の従業員が得た特許権が、原則として企業のものになるという事です。発明した方が個人であったり、フリーランスであればともかく、企業に勤務している場合、せっかくの特許権が自分のものにならなくなるのです。
もし、これまでも就業規則で従業員の発明の権利は企業のものになるとあれば、企業のものとなりますし、その対価として発明した従業員に支払われました。しかし法改正後は基本的に会社が特許権を有し、会社が認めれば発明した従業員の権利とする事になるでしょう。ある意味、同じ事の様に思えますが、原則的に権利を企業が持つとなれば、企業側もそれを当然と考え、従業員に対するインセンティブが減る可能性も感がれました。
しかし実際のところは従業員側からしてみれば、元々は就業規則で企業の権利になる事や、企業の設備を使用している点を踏まえても、法改正はそれほど問題としておらず、それよりも研究できる環境の確保が優先の様です。
著者

所長弁理士 木村高明
所長弁理士
専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。
製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。
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