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PCT国際調査制度

世界レベルで統一された調査制度

PCTには「国際調査制度」がある(PCT15条)。

「国際調査制度」とは、PCT発効前には各国別で行っていた特許出願に関する調査を世界レベルで統一的に行おうとしたものである。本来、「PCT出願」とは、概念的には「出願の束」と言われており、多数国への出願がひとまとめになったものであるから、一つのPCT出願に対する国際的な観点からの単一の調査を行うことが論理的である。従って、PCT創設時の段階では、「単一の国際調査機関」(aSearch Authority)が単一の調査を行うことを目指していた。

しかしながら、調査資料の問題、言語の問題、調査機関の調査能力の問題等があることが判明し、その結果、各国特許庁に国際調査を分担してもらうこととなった。これが現在の「国際調査制度」の実態であり、現在、国際調査を行う業務能力のある複数の特許庁が「国際調査機関」となっている。従って、現在の国際調査の姿は、PCTの当初の理念とはややかけ離れた「合理的な妥協案」であり、現在の国際調査に伴う問題点は、全てここから始まっている。

「国際調査は国際的な観点からの調査を行い、出願人は国際調査の結果を参照して国内係属すべきか否か、の判断を行う」ものと多くの方が理解しているが、実際のPCT実務ではそうではない。この問題こそが、その後、WIPOにおける「PCTリフォーム会合」等の会合において議題となる「国際調査の質の問題」である。これが、現在もなお完全には解決されていない「国際調査の限界性」である。

この原因は、一言でいえば、「特許の本来的資質である国際性と、現実の各国法体制の属地性との間で起きる問題」である。即ち、本来、発明品は各国間で流通し、多数国で特許を取得する場合が多い、という国際性を有しているので、本来的には、「各国特許制度を統一化した世界特許制度」が条約等で成立することが理念的には望ましいが属地主義下ではこのような世界特許システムは現実には実現不可能である。その妥協の結果が、現在の「PCT制度」である。

さらに、特許情報の各国共通化の課題がある。即ち、各国特許文献は各国言語により成立しており、各国特許庁の審査官が全てを判読できるわけではない。また、審査において必要とされる各国言語の障壁の問題(各国審査官の使用言語能力の問題)もある。

WIPOにおける各種「PCT会合」では、特に「国際調査の質の向上」が継続して議題となり、その結果、現在のような、非常に精緻な構造の国際調査制度に改正されてきている。

法改正により「国際調査報告見解書」も発行され、担当審査官が「発明の新規性及び進歩性に関しどのような見解を持っているか」を詳細に記載することとなっているが、こうなると、国際予備審査制度(PCT31条)と実質的に同様の内容を有するようになってきており、PCT制度全体の整合性としては、国際予備審査制度と併存することの意義も問われるようになっている。

理想と現実とのはざまで、なお課題を抱えており、制度改正されてきているとはいえ、我々代理人側では誤りのないように出願人を良好な結果に導き、クライアントに対してPCT制度に対する不信感を抱かせないようにする必要があり、弁理士が、PCT制度の本質と、現在のPCT制度が抱える問題点をよく認識しておく必要がある。

著者

所長弁理士 木村高明

所長弁理士 木村高明

所長弁理士

専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。

製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。

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