経験豊富な弁理士が解説-日本における「色彩(一色)のみの商標」の取扱-

-日本特許庁・ルブタン事件の進展-
2017年4月1日より、法改正によって日本でも色彩のみからなる商標の登録されるようになった。これにより欧米と同様に日本でも色彩のみにより構成された商標の登録例が増加しつつある。日本特許庁には、2020年現在、104件の「色彩のみの商標」の登録がある。但し、日本では「複数色の色彩の商標」は登録されているが、未だ「一色のみの商標」の登録例はない。
現在、複数の一色のみの商標の出願が特許庁・商標部門において審査中であり、その中にはフランスの有名な婦人靴メーカーであるクリスチャン・ルブタン氏による「レッドソール」に関する商標出願もある。周知のように、クリスチャン・ルブタンのブランドは、ルブタン氏の赤い靴底のハイヒールをハリウッドセレブが好んで履いたことから、欧米においては有名で既に色彩のみの商標として登録になっており、日本でも法改正を待って出願されたものである。
これに対し、日本の婦人靴メーカー等が「靴底に赤い色彩を施すことは商慣習上、歴史的に日本では行われてきており、識別力はない。登録は既得権を害する」旨の情報提供を行っている。日本特許庁は、単一色のみからなる商標に関しては、「原則登録を認めない。但し、使用により識別力の発生が証明されれば登録する」という立場をとっている。
審査において拒絶理由通知が出され、ルブタン氏側は「レッドソールを持つハイヒールはルブタンのものとして日本でも有名である」旨の主張、立証を行ったが、日本特許庁は拒絶査定をしており、現在、ルブタン氏は審判請求を行い、特許庁における第二ラウンドが始まっている。今後の進展が興味深い。
著者

所長弁理士 木村高明
所長弁理士
専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。
製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。
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