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中小企業知財について

中小企業知財について語っています。

以前も書きましたが、中小企業の技術アイデアは「構成」が簡易である、という点は、中小零細企業の資金力、人財力、技術力を考慮すれば、避けて通れない問題であり、この一見、簡易な構成のアイデアを、いかに進歩性のハードルをクリアして保護するか、が中小企業知財の一つのポイントであり。また中小企業支援弁理士の課題です。

典型例として、前回ご紹介した「85度の開口角度を有する平面方形状の食品容器」事件があります。この事例は、当所の顧客である紙製容器製造販売業の会社からのご依頼でした。資本金の額から言えば完全に零細企業です。しかし、2代目となる専務は非常にガッツのあるアイデア満載の経営者であり、中国の紙容器製造メーカーと非常に良好な関係を保持し、優れた紙製容器(高級弁当の箱)を日本で販売しておられます。

「なんとか特許にしたいが」と言って相談にこられた際に提示された紙製容器は、一見何の変哲もない蓋つきの直方体の紙製弁当箱です。しかし、わずかに側面部が上方へ向かって開くようなテーパ状に形成されております。

専務によれば、「開口角度が85度であり、この開口角度の場合が、搬送時に、最も効率よく重ねて運べる」とのことでした。そこで、そのような請求範囲、明細書を作成して特許出願したのですが、何度か進歩性欠如の拒絶理由通知をもらいましたが、最終的に審査段階で特許になりました。

この案件の場合、正直にいって、「果たしてこんな簡易な構成で特許になるのであろうか」という想いと、「いや、明確で大きな効果があるので特許可能であろう」という想いが交錯し、悩みながら拒絶応答を行っておりました。

幸い、特許になったのでこの事例は成功といえますが、残念ながら「効果は大きいが構成が簡易」な案件で、審判まで行っても進歩性をクリアできず、最終的に特許化できなかった事例もあります。

また、以前のお客様で、大腸内視鏡の名医といわれた内科医師がおられました。この内科医師は、大腸内視鏡による検査、手術は、非常にスキルを要し、場合によっては大腸のせん孔事故が起きていたことから、経験の浅い若手医師でも事故を起こさないような大腸内視鏡を考案されました。

但し、この案件も構成は非常に簡易ですが、効果は大きい、という案件でした。この案件を出願したところ当然に進歩性欠如の拒絶理由が発せられ、その医師と共に特許庁へ出向き、担当審査官と拒絶克服に関する面談を行いました。発明者と私の話を聞いて審査官が言った言葉は、「お話は伺いましたが、この発明は私の胸を打ちません」ということでした。即ち、「確かに効果はあるようであるが、このレベルの工夫では特許にするモチベーションが出てこない」ということであろうと思います。この審査官の言葉が、非常に簡明に「構成の困難性=進歩性」という審査官の思考を表現していると思います。

顧客の利益を守りつつ権利化を進めるのが代理人としての職務ですが、特許化になるかどうかは、最終的には発明そのものの資質、進歩性の程度にかかっていることから、お客様の理解を得ながら進めることが重要と考えております。また、このような場合には、実用新案での出願、出願変更も含めて対応を検討すべきと考えます。

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