特許法の存在意義と必要なシーン
特許法の正確な意味を考察して理解する
良く耳にする言葉で特許という単語があります。辞書などで改めて調べなくても何となく意味は理解できる方がほとんどだと思いますが、その特許のもとになる特許法とは、どの様な法律なのか、その意味について以下に詳しくまとめます。
特許法の目的は、第一条に謳われているように、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、産業の発達に寄与すること」を目的として、経済産業省特許庁により定められている法律です。
つまり、産業の発達を達成するための手段として、発明の保護と利用を制度として定められた法律が特許法なのです。企業や個人が新しく発明したものが模倣されてしまったら、開発に必要な経費や時間的なコストが回収されることなく、無駄な労力となってしまい、発明事態が意味の無い物になってしまいます。このような損な状態が発生しないように、特許法という法律により、発明の権利を保護することで、産業の発展を推進することを目的とした法律なのです。
日本で特許法が生まれたルーツについて。
日本で最初に制定された特許法は、1871年の明治4年に公布された「専売略規則」による物です。この当時は、日本では、この規則を運用していく知識や経験が少なかった為に、規則が制定されてから、1年後に施行中止になってしまいました。一番初めに制定された時期はかなり古い物ですが、当時は、発明される事自体稀なことでしたので、制度が出来てもすぐに廃止に追い込まれてしまったのです。
現在の特許法につながる日本の特許制度の基となったのは、1885年(明治18年)4月18日に公布された「専売特許条例」です。その後、改正案が出されて何度か改正が行われて、現在の特許法が1959年(昭和34年)に成立しました。
時代の流れと共に変化した特許法の改正案
特許法は、時代の流れと共に、何回も改正されてきました。最近の改正から調べてみると、以下の通りです。
2014年度特許法改正
・特許異議申し立ての復活により、平成15年改正前と比較した主な相違点に、審理方式が書面に限定された事、訂正の請求があった時の異議申立人への意見書提出機会の付与、訂正の請求の範囲や決定の確定の範囲の規定の導入が有ります。特許無効審判を請求できる人は利害関係者に戻されました。
2011年度特許法改正
・ライセンス契約の保護の強化で、事業の安定性を確保するために、企業が社外の技術を活用するために必要なライセンス契約の保護を強化する物です。
・共同研究の成果に関する発明者の適切な保護とは、企業や、大学で一般化している共同研究や共同開発の成果を適切に保護する物です。
・ユーザーの利便性向上とは、中小企業の負担を軽減するための改定案で、知的財産制度のユーザーの利便性向上を図る物です。
・紛争の迅速、効率的な解決のための審判制度の見直しの各措置については、知的財産を巡る紛争のコストを低減する為に、紛争を迅速かつ効率的に解決する法案です。
2008年度特許法改正
・通常実施権等の登録制度の見直し
・不服審判請求期間の拡大
・優先権書類の電子的交換の対象国の拡大
・特許関係料金と商標関係料金の引き下げ
このように2,3年に1回の割合で、特許法は、改定されて、新しい法案に変化を遂げてきました。時代の流れと共に、古い法案は、随時見直されて新しくなっています。
著者

所長弁理士 木村高明
所長弁理士
専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。
製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。
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