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中小企業知財と紛争事件2

私の経験からは、中小企業は様々な原因により紛争事件に巻き込まれる場合が多いといえます。大企業の場合には、このような紛争事件を解決するために法務部、知財部がありますが、中小企業の場合には、自社内で紛争事件を解決することはなかなか困難な場合は多いものです。ここに紛争事件における弁理士、特許事務所の存在意義があります。

知財訴訟事件の進行は、無効論 ⇒ 侵害論 ⇒ 損害論という形になります

無効論は、権利者が「貴下の行為は権利侵害であるので製造販売を停止してほしい」旨の警告をした場合に、侵害者から権利者の保有する特許、商標登録等に対して異議申立、又は無効審判を提起されることにより始ります。

無効論においては、原告側で、事前に無効調査を徹底的に行い、被告側が権利無効を主張して、異議、無効審判、侵害訴訟での無効主張があった場合であっても、無効論に勝って、侵害論へ移行できる可能性があるか否か、予めアセスメントをしておく必要があります。

現状、無効審判は請求から審決まで、約1年程度を要しております。審決に対して不服な場合には知財高裁へ出訴ができ、最終的には最高裁までフルコースで争えます。このようにフルコースとなった場合には、無効論のみで2年前後ほどかかります。当然にこれに伴う費用も発生します。私の場合には、中小企業顧客が原告の場合で、無効論で2回ほど最高裁まで争った経験があります。

次に、侵害論ですが、特許、実用新案では、被告製品が原告の権利範囲に入るか否か、の議論であり、「権利に抵触する」ということを主張立証して、原告の主張を裁判所に認めてもらう作業を行います。

特許侵害においては、原則として被疑侵害物件(イ号等の物件)が、請求範囲記載の文言(構成要件)をすべて具備して技術的範囲に属し「文言侵害」が成立するか否か、の議論が必要になります。

もし。文言侵害が成立しなければ「均等侵害」を検討しますが、日本の場合、均等論そのものは裁判所で容認されていますが、均等侵害は裁判所では簡単には容認されません。現状、均等論の主張が容認されるのは、ある情報によれば10%程度と言われております。

均等論の五つの成立要件の内、特に、第一要件の認定が厳しいといえます。私が経験した中小企業が原告の実用新案権侵害訴訟でも、残念ながら、均等侵害は認められませんでした。侵害論が終了した段階での「心証開示」で「均等論侵害は認めない」という裁判所の心証が開示されましたが、その事件は、裁判上の和解で終了したので、均等論のどの要件が不成立であったのかは不明でした。

そして、侵害論において侵害が成立したことを裁判所が容認したことを前提に、最後に損害論となります。裁判所における侵害論後の「心証開示」で「次回から損害の議論を行う」旨の発言があれば、侵害論で原告の主張が認められて権利侵害が成立し、損害論に移ることを意味しています。

特許庁での無効論⇒裁判所での侵害論・損害論を訴訟で争った場合に、和解で終了する場合であっても、3年程度はかかります。中小企業が原告の場合、和解額、判決での損害額が実際に中小企業の損害に見合っているか否か、に関しては、かなり疑問といえます。その原因の一つは均等論の容認率が非常に低いことが大きな原因です。

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