特許査定の概要と意義
特許査定の意義と登録査定について
特許査定というのは、実体を審査をした結果、特許権を得るのに値する案件であると判断されて特許が認められる場合に、特許庁の審査官が出願人に特許を許可する場合に行う査定のことをいいます。
正しくは、「特許をすべき旨の査定」といいます。
特定査定が行われると、出願人に対して特許査定の謄本が送付されます。
送付後30日以内に特許料の納付(設定納付)を行うと、特許原簿への登録が行われて特許権が発生します(なお、原簿に登録された日を登録日とします)。
また、特許の内容が特許掲載公報に掲載されるのです。
商標としては、”登録査定”といいます。
特許と同じように、登録査定の後に登録料を支払うことにより、原簿への登録が行われて商標権が発生します。
特許請求の範囲の意義と書面に関して
特許権の保護範囲とは、明細書等に何を記載したかとは関係がなく、特許請求の範囲に記載された内容(技術的範囲)によって決定されます。
発明から得られる利益は、一に、特許請求の範囲の記載によって決定付けられます。
その為、特許請求の範囲の記載には心血が注がれるのです。(請求した)特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載されていなければなりません。
この要件をサポート要件といいますが、特許権の保護は公開の代償として与えられるものであるので、公開(開示)していないものに特許を請求することは許されません。「特許請求の範囲」は、特許を請求する発明の権利範囲を確定する書面なのです。
明細書や図面に関しては、一面において、この特許請求の範囲に記載された発明の特許性を裏付けられるものといえるでしょう。
「特許請求の範囲」の書類提出について
「特許請求の範囲」の書類は、「この範囲について特許権が欲しい」と、出願人が必要とするものを主体的に選択して請求します。即ち、権利範囲の主張と言えます。
そのため、この「特許請求の範囲」に記載されていないもの(権利を主張していないもの)は、出願人が特許を望んだものではないとされるのです。
たとえ、発明を模倣した製品が販売された場合でも、その製品が、(明細書に記載されたものであっても)この請求の範囲に記載された技術的範囲になければ、特許権侵害を主張することはできないのです。
審査官は、『出願人が判断して(特許庁に)投げかけた特許の請求』に対し、出願人が請求するものには拒絶の理由が存在するか否か」という判断をするだけなのです。
そのため、広く強い権利範囲を取得できるか否かは、出願人の主体性に係わる問題となります。
つまり、広く強い権利範囲を取得できるか否かは、出願人の、第三者の模倣の防止や参画の抑制や権利の許諾に伴う経済的利益の取得などを追求した戦略的思考の反映次第ということになります。
特許査定を見極めた上で認めてもらうには
出願人には、ここまでなら権利が取れると言う見極めをする努力が大切ということになります。
見極めをするためには、発明の技術的特徴を的確に捉え、先行技術との差異を明確にして新規性・進歩性の 存在(創作性の存在)を確認することが重要なのです。
そのためには、審査官に対するうまい投げかけの仕方を考える必要があります。
見極めが難しければ、普通は、やや広めの請求の範囲を記載しておくか、広い範囲の請求項及び確実に権利が取れる範囲の請求項をいくつか列挙し、審査官の判断とすりあわせをしながら補正をすることによって確定することになるでしょう。
著者
所長弁理士 木村高明
所長弁理士
専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。
製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。
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