実用新案制度(2)
実用新案登録制度について
「特許制度」の他に「実用新案登録制度」がある。実用新案登録制度とは、一言で言うと、「小発明」を保護する制度である。「実用新案登録制度」が存在する国は、限られており、日本、中国、韓国、ドイツ、ロシア、スペイン、オーストラリア等である。利用率は日本、ドイツは高くないが、中国では非常な伸びを示している。日本では大企業はほとんど実用新案制度を使わないが、中小企業の利用率は高い。理由は、牛丼チェーンの宣伝ではないが、「速い、安い、美味い」からである。即ち、費用は特許の場合の半分以下、権利化までの期間は約3か月、存続期間は10年と短いが、新規性、進歩性を有する場合には権利の強さは特許と変わらず、使い方によっては、マーケットにおいて特許と同等以上の働きをする。実用新案制度は中小企業の味方である。
実用新案登録は無審査主義である。即ち、方式的審査のみを行い、新規性、進歩性に関する実体的審査は登録前には行わず登録してしまう。これは、1993年から無審査登録制度に改正されたもので、それ以前は特許と同様に登録前に事前に実体的要件を審査していた。但し、産業界から特許も実用新案も登録に時間がかかる、という批判があり、これに応えて実用新案は無審査制度に移行した。
但し、事前に審査をしていないことから、登録の価値は権利者にも第三者にも明確ではない。そこで、登録後に「技術評価制度」により、請求により特許庁は登録の成績表を発行することとなった。
例えば、警告書を発送する場合には、警告書に「技術評価書」を添付して行う必要がある。被警告者もこれにより権利行使している実用新案登録の客観的価値が判明することとなり、その後、被警告人は「新規性又は進歩性がないので、無効審判を請求する」又は「新規性も進歩性も具備しているので、和解の方向性を探ろう」となる。
従って、無審査という点で特許よりも権利の安定性という観点からは脆弱な印象があるかもしれないが、「技術評価」において最高の評価(点数制で、最高点は6点)を得られれば、十分に侵害訴訟にも耐えうるものである。
但し、方法の発明、形状又は構造として把握できない発明は実用新案の保護対象とはならない点で留意が必要である。残念ながら、日本での実用新案制度の利用率は低い。但し、使い方によっては非常に効果的に、コストを抑えて、特に小規模企業を保護できる。従って、市場でも早期権利化を希望する場合には、実用新案での権利化も視野に含めるべきである。
著者
所長弁理士 木村高明
所長弁理士
専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。
製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。
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