<特許取得事例>分割出願による特許ポートフォリオ―
徹底した分割出願戦略を用いた事例
ある中小企業の発明案件に関し、徹底した分割出願戦略を用いた事例を紹介します。
この顧客様は、非常に特許に関する意識が高く、かつ、ご自分で良く特許制度、審査手続を学習されておられます。その結果、審査段階で審査官との間で議論が膠着状態になり審判請求に至った場合には、必ず、審判請求と同時に分割出願を行い、複数世代に亘る分割出願を行っております。
多世代分割戦略の目的は、「特許ポートフォリオ」を形成することにあり、ある技術に関し、複数の切り口から多数の特許を成立させ、「特許網」を構築し、他社の模倣を徹底的に排除しようという戦略です。
この戦略は、大企業において、会社にとって重要な発明の場合には、非常に広範囲な基本発明に関し、多くの特許情報を入れ込んだ規模の大きな特許明細書により出願しておき、その特許明細書の豊富な特許情報の中から様々な発明を抽出して個別に分割出願とし特許化するやり方です。
このような考え方はかなり以前から存在するのですが、このやり方を行う場合には、分割出願費用がその都度発生するため、どちらかといえば大企業、中規模以上の企業により行われておりました。本件依頼人は中小企業ですが、代表者の特許に対する意識が非常に高く、多数回の分割出願により多数の特許が成立しており、非常に精緻な特許網が成立しております。
このような「特許ポートフォリオ」が成立してしまうと、他者は模倣はおろか、市場への参入そのものも困難になるため、非常に有効な企業防衛策といえます。
出願人にとっては費用負担が問題となるのですが、本件の場合には、ある種特殊な技術であることから、弁理士側で一度理解すれば、その後、同じ技術の複数の側面で権利化するものであり、当所側手続に要する時間も次第に削減できたことから、分割費用に関しては柔軟に対応することができ、出願人の負担を軽減した形で特許化を進めることができました。
著者
所長弁理士 木村高明
所長弁理士
専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。
製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。
特許お役立ち情報の最新記事
- 中小企業知財について
- 中小企業知財と知財意識
- 中小企業知財と紛争事件2
- 中小企業知財と紛争事件2
- 中小企業知財と紛争事件1
- 補論:特許査定と判決文
- 中小企業知財と発明の進歩性4:具体事例
- 中小企業知財と発明の進歩性3:具体事例
- 中小企業知財と発明の進歩性2
- 中小企業知財と発明の進歩性1
- 大企業知財と中小零細企業知財
- 初めて商標登録をされる方へ−商標のマストな基礎知識−
- −プロの弁理士が解説!−特許侵害紛争事件について
- <特許取得事例>「革新的被服技術案件」
- <特許取得事例>「AI利用地図作製技術案件」-審査段階における「オンライン審査官面談でのプレゼン」の成功例―
- <特許取得事例>「ストレス判定技術案件」―大学教授による先進技術発明·進歩性判定予測の難しさ―
- <特許取得事例>分割出願によらない特許ポートフォリオ―
- 初めて特許を取得する方へ −3つの条件をプロの弁理士が解説します−
- COVID-19と特許問題
- 国際段階を管轄するPCT制度
- 特許制度調和の歴史
- パリ条約とPCT
- 世界知的所有権機関(WIPO)と特許制度調和
- 世界の知的所有権の国連専門機関–WIPO–
- 特許要件・「進歩性」とは
- ★プロ弁理士が解説!日本の実用新案制度の紹介−自社のマーケットを守るために−
- 実用新案制度・中小企業には必須の制度
- PCT国際調査制度
- 特許審査について
- 事務所の実力が決まる!特許事務所の“パラリーガル”について
- 分割出願戦略・特許ポートフォリオ
- 実用新案制度(2)
- 特許審査と審判の関係
- 経験豊富な弁理士が解説-日本における「色彩(一色)のみの商標」の取扱-
- 弁護士と弁理士の関係
- 紛争事件と「記載要件」
- 中小零細企業と特許(知財)について
- 特許調査の概要・意義と特許調査のメリット
- 特許マップ(パテントマップ)の概要と意義
- 特許の請求の範囲と明細書の書き方
- 特許の無効審判とは?無効審判の意味と申請の流れ
- 特許出願・特許申請で必ず注意しなければならないポイント
- 特許にも有効期限・期間はある?申請時に意識しないといけないポイント
- 特許査定の概要と意義
- 特許申請の流れを教えてください!
- 特許年金とはいったい何?
- 特許の申請、どれくらい費用がかかるの?
- 特許の取り方の大まかな流れと注意するべきポイント
- 最新の特許法改正による影響は?
- 特許法の存在意義と必要なシーン
- 特許を扱うのに必要な資格とは
- 特許事務所の仕事と必要なスキル
- 特許翻訳の仕事と必要なスキル
- 特許庁と商標の関係
- 特許庁に採用されるために必要なこと
- 特許庁のお仕事と必要なスキル
- 特許に関わるお仕事の種類とは