中小企業知財と知財意識
今回は、中小企業と知財意識について述べます。
中小企業知財で陥りがちな問題点は、中小企業の知財意識の低さです。
この点については、大企業は専門部署である知財部、法務部があり、専門人財が社内の知財関係を常時、監視しているので知財意識は一定程度に維持されていますが、中小零細企業には、一般的に「知財部」はなく、総務部や、場合によっては代表者自身が知財管理を行っており、少数の意識の高い中小企業を除き、一般的に、社内の開発部門を含め、残念ながら知財意識は余り高くありません。
その結果、「新製品販売後1年経過したがマーケットでの評判が良いので特許を取りたい」と言って特許事務所を訪問する、というような事態が発生します。また、「中国でのヒット商品を輸入して日本で販売した。中国の製造業者は中国で特許を持っているので大丈夫、と言っていたが、他社から特許侵害で警告された」というような事態が発生します。
前者は、新規性喪失の例外の期間(公知行為から1年)を経過しており、法的には新規性はなくなります。また、後者では、属地主義なので中国の特許権の効力は日本には及んでいないため、日本で販売前に特許侵害調査をすべきであったものです。このように「発明者自ら知らずに知財をつぶす、他社の権利を知らずに侵害する」といった事態は非常に頻繁に起きます。中小企業、特に、零細企業への啓もう活動が必要なゆえんです。
また、フランスの建築家であって個人発明家が自分の発明を日本で特許化し、その特許に基づき日本で事業を開始しましたが、請け負ったゼネコンが特許発明を模倣しました。しかしながら、非常に情緒的な人で契約の相手方を気に入ったことから「紳士協定」は作成していたのですが、正式な契約書を交わしていなかった、という事件もありました。
損害賠償請求訴訟を提起し、和解金1億円近くを取りましたが、高裁まで争っており、解決には4年かかっています。その方は、フランス人なのですが元々イタリア出身であり、日本の企業と意気投合したので「紳士協定」で済ましていた、とのことでした。陽気なイタリア人気質のために発生した事件だったかもしれません。
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