特許審査について
特許審査における「調査」について
本来、特許庁の審査は、「関連先行特許情報の調査」と、「当該調査より抽出された関連特許情報に基づく本件発明都との対比・法的評価」がその実体である。「発明の分類」(「国際特許分類」:IPCと称する)がIPC条約に基づき、世界統一で規定されている。従って、IPC条約締約国は、IPCに基づき発明を分類して調査を行う。日本の場合には、さらに、IPCに基づき、FI(ファイルインデックス)、及びFタームという独自のサーチ手段を考案し、これに基づき審査での調査を行っている。
この審査における調査そのものが問題を抱えている、現在は、全ての国が、特許要件としての新規性、進歩性について「世界公知主義」の思想を採用していることから、「この発明に新規性がある」という判断を行う場合には、「世界的に見て、どの国でも新しい」ということが本来的には判断されなければならない。従って、理念的には、審査では世界各国の特許情報全てをその国の特許庁が調査できることが望ましいが、特許審査における「言語障壁の問題」がある。即ち、各国特許文書は各国言語で発行されることから、属地主義の観点からは、各国調査は各国の言語により各国の特許文献を先ず調査して審査資料を形成することになり、必要に応じて(例えば、異議、無効審判内で証拠として提出された場合にはその限りにおいて)外国文献に関しても翻訳文を介して調査、審査する、ということになる。また、この点に関しては、各国審査官の言語対応能力の問題もあった。これには、各国間でのデータベースの共有化の問題もからむ。即ち、各国特許庁は夫々に時刻の特許庁のデータベースを個別に保有していたが、言語障壁問題を含み、各国のデータの共有化をいかに行うか、という技術的、政策的観点からの議論が十分になされていなかったが、その後、機械翻訳技術の発達及び、各国特許庁における各国特許庁間で審査データ共有化の議論が進んだことにより、少なくとも、5大特許庁(米・日・EPO・中・韓)間においては特許審査データの共有化が進んでいる。
その結果、現在は、日本の特許出願の拒絶証拠として米国特許公報、中国特許公報等が指摘されるようになっている。また、それ以外の国の公報が証拠として指摘された場合でもGoogle翻訳を使用し、内容を理解することも可能となっている。
従って、技術の進歩、それに基づく各国特許庁の努力により、次第に法律理念に沿った審査実態を形成することが可能となりつつある。
著者
所長弁理士 木村高明
所長弁理士
専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。
製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。
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