<特許取得事例>「ストレス判定技術案件」―大学教授による先進技術発明·進歩性判定予測の難しさ― | 特許申請・出願の無料相談|至誠(しせい)国際特許事務所
         

<特許取得事例>「ストレス判定技術案件」―大学教授による先進技術発明·進歩性判定予測の難しさ―

「ストレス判定技術案件」―大学教授による先進技術発明·進歩性判定予測の難しさ―
「ストレス判定技術案件」―大学教授による先進技術発明·進歩性判定予測の難しさ―

事例から見る、進歩性の事前判断の困難性

 この発明はある大学の教授によりなされた発明であり、ある意欲的な知財コンサルにより見いだされ、これからその特許の利用を図って行こうとしている案件です。

「ストレスの見える化·数値化」を迅速に行うことが可能になれば、様々な産業分野への適用、応用が予想できます。

例えば、自動車技術分野において、「ドライバーのストレス量を随時測定し、運転監視を行い、事故の未然防止を図る」ことや、教育現場に適用し、講義の各受講生のストレス度を測定し、講師へフィードバックすることにより講義方法、演題を変更、調整し、より授業効率の良い講義を行う」といった適用の可能性があります。

この発明は、「人間のストレスを特殊な方法を利用して数値により定量的に測定する」ことに関するものであり、測定方法に大きな特徴があります。

 SMEs(中小零細企業・個人発明)の場合、出願前の特許調査(権利侵害の有無判断、特許可能性の判断)が非常に重要です。その理由は、大企業の場合には、会社内部に「知財部」があり、開発部門から発明提案があった場合には、先ず、知財部で特許調査を行い、権利侵害の有無の確認、特許可能性の判断を行った後に、特許出願の作業に入ります。

 当然なから、SMEsの場合には、社内に知財部はない場合が圧倒的に多いことから、当所では従来より「当所を社外知財部としてお使いください」と提案しており、特許出願の依頼があった場合には、先ずは、「特許調査」を行うことをお勧めしております。

 本件の場合にも発明案件を受任した際に、先ずは特許調査を行いました。その結果、「ストレスを何らかの方法で定量化し数値化する」という分野に関しては、従来より様々な技術、特許文献が存在することが判明しました。

本件発明のポイントは「医学分野の発想、技術」の観点を「ストレス測定」に適用したものであることから、従来特許文献との関係では、「新規性」は問題ないのですが、場合によっては「進歩性」の欠如を指摘される可能性があることを、代理人としては危惧しておりました。この点を出願人及び知財コンサルに了解してもらったうえで特許庁に出願し、早期審査を行ったものですが、幸運にも、審査では「医療技術手法を適用してストレスを測定、判定する」ことに関する、従来技術からの困難性が容認され、特許が成立しております。

この案件で学んだことは、やはり「進歩性の事前判断の困難性」です。

例えば、出願人側が主観的な特許可能性に盛り上がり、特許後の権利活用の算段をしているような場合には、代理人側では進歩性の主張が場合によっては認められず、最終的に特許されない場合もあることを知っていることから、進歩性が具備されているか否か、の予測については厳しく判断し、「場合によっては特許化が困難になる可能性もありうる」等の見解を述べ、今後の展開に関しての理解を求めることも必要となります。

また、当然のことながら担当審査官によっても、発明観、技術観、さらには世界観が異なることから、進歩性の評価に関しても(審査基準に基づきながらも)結論が異なる場合もあることから、代理人としては、進歩性の評価に関しては慎重にならざるをえません。

本件の場合にも、技術レベルが高いことから発明の効果も大きく、一応の、進歩性に関する「文法」においてはクリアはしてはいたのですが、審査官の評価の如何が予測できなかったため、慎重に構え、辛口な評価をしていたものです。

しかし、特許庁の審査では、当方の懸念に反し、審査官に非常にストレートに特許性を評価していただき、特許が成立することとなり、発明者及び発明コンサルの方には喜んでいただくことができました。この出願はダイレクトPCTでの国内権利化であったことから、現在は、外国での権利化の検討を行っております。

著者

所長弁理士 木村高明

所長弁理士 木村高明

所長弁理士

専門分野:知財保護による中小企業(SMEs)支援。特に、内外での権利取得、紛争事件解決に長年のキャリア。

製造会社勤務の後、知財業界に転じ弁理士登録(登録番号8902)。小規模事務所、中規模事務所にて大企業の特許権利化にまい進し2002年に独立。2012年に事務所名称を「依頼人に至誠を尽くす」べく「至誠国際特許事務所」に変更。「知財保護による中小企業・個人支援」を事業理念として現在に至る。事務所勤務時には外国業務担当パートナー。日本弁理士会・国際活動センター元副センター長。国際会議への出席多数。

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